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サラリーマンが老後を活き活きのびのびと生きる

幸せな高齢者のカップル

まえがき

 

 私のまわりにはスーパー老人が何人かいます。83才で太極拳の指導を3か所でやっている人、88才でゴルフコンペに参加してドラコン賞を取る人、93才で大きなトラクターを運転して田を耕している人。これらのスーパー老人たちは活き活きのびのびと生きています。こんなふうに年を取っていきたいと私は願っています。

 

 シニアを対象にした本はたくさん出版されていて、私もシニアとなったため、何冊か拝読させていただきました。感銘を受け、参考にさせていただいたことも多々あります。すべての本を読んだわけではありませんが、執筆をされている方々は医師の方、作家の方、著名人の方が多いように思います。

 

 しかし、私はサラリーマン出身のシニアです。サラリーマンの経験と実感をもとにシニア本を書いてみることにしました。サラリーマン時代にファイナンシャルプランナーの学習をして資格も取得していましたので、FP資格とサラリーマン経験を踏まえて、サラリーマンができる具体的なことを織り込んでまいります。

 目 次

 一 老後資金は大丈夫?

  ①老後2000万円問題

  ②老後経済の具体的な算出方法

  ③資産を増やす

  ④老後を働く

 二 趣味を作る

 三 家を守る

  ⑤家とは何か

  ⑥葬式とは何か墓とは何か

 四 エンディング

  ⑦エンディング整理

  ⑧リビングウィル

 五 老後を活き活きのびのびと生きる

  ⑨捨てる

  ⑩工夫をしながら拾う

 

 一 老後資金は大丈夫? 

① 老後2000万円問題

 シニアになれば、老後資金のことを心配します。2019年に金融庁が発表した老後2000万円問題はシニアや若者たちに不安を募らせました。

 計算の根拠は次のとおりでした。毎月のシニア夫婦(会社員であった夫65才と専業主婦60才)の平均的な月収は20万9198円、平均的な支出は26万3718円、その収支は月5万4520円の赤字となります。今後平均年齢が伸びて、あと30年生きるとしたら、5万4520円×12カ月×30年で1962万円の赤字となります。これが老後2000万円問題の根拠です。すぐに分かることですが、条件が変わればその数字は変わります。その家庭の収入と支出によって変わりますし、会社員か自営業かでもまったく計算が異なりますが、世の中の多くの方が不安になりました。

その背景には4つの要素があると思います。

要素1 平均寿命が本当に伸びている

要素2 医療費の負担が増えている

要素3 70才定年と年金受給年齢の引き上げ

要素4 現役世代の収入が減っている

1つずつ見ていきましょう。

 

要素1 平均寿命が本当に伸びている

 

 2025年7月に厚生労働省が発表した平均寿命は、男性で81.09才、女性は87.13才です。75才の人の平均余命は男性で12.08年、女性は15.75年で、40年前と比べると4~5年伸びています。

 私は会社勤めだったので会社のOB会の会報が定期的に郵便で自宅に届きます。その中に訃報連絡も記載されていて、その方々の年齢を見ると、90才を超えた方が非常に多いです。100才超えの方もチラホラいて、平均寿命が伸びていることを実感しています。

 シニア世代もいろいろです。冒頭に記載したスーパー老人たちは医療費や介護費をあまり使っていないようです。ところが平均的な健康寿命は男性が72.57才、女性が75.45才と言われています。以前と比べると平均寿命と健康寿命の差は縮まってきているようですが、スーパー老人たちは平均的ではないようす。この2つの寿命の差である「日常生活に制限がある期間」が男性で8.49年、女性で11.63年あるわけですが、この期間を含めて家族は生活できるだろうか、という不安が多くの人にあるようです。私自身、FP資格を持っているので、数年に一度将来の収支シミュレーションを行っているのですが、この日常生活に制限がある期間のコストの見積もりが一番難しいところです。

 

要素2 医療費の負担が増えている

 

 国の社会保障費が増え続けて現役世代の負担が大きくなっている中で、老後の医療費の全額を国が保障する余裕はありません。

 ただし、日本の国民皆保険制度はどの国よりも優れた制度です。国民全員を公的医療保険で補償し、安い医療費で高度な医療が受けられ、なおかつ国や地方が公費を投入しているからです。

 医療費のうちで被保険者と事業主の保険料負担は5割程度、国と地方の公費負担は4割程度なので、患者負担は1割程度で済んでいます。

 私は若い頃、海外で勤務する方を日本国内からサポートするような仕事をしていたことがありますが、海外での医療費の個人負担はとんでもなく高額です。アメリカで今、盲腸の手術をすれば5万ドル程度(750万円)かかります。仮に20%負担の医療保険に加入していたとしても150万円の本人負担です。アメリカでの本人負担なしの医療保険に入った場合の掛け金はかなり高額となります。

 ですから皆さんが海外旅行に行かれる時は、是非とも海外傷害保険に加入することをお勧めします。

 

 大谷選手の元通訳が歯の治療に900万円かかったと証言をして世間から「そんなはずはない。」と批判を浴びましたが、私はまんざらデタラメではないように思います。

 その優れた日本の医療保険制度が危うくなってきています。

 後期高齢者の医療費の負担割合については、一律1割負担だったものが、2022年10月から所得によって2割負担、3割負担となりました。3割負担とは現役並みの所得がある場合です。もともと1割だった医療費の窓口負担が2割へと引き上げられたため、外来医療については月3000円までにおさえる「配慮措置」が導入されてきました。 ただしこの措置は2025年9月末で終了し、以降は自己負担額が上がる可能性があります。仮に医療費が高額になった場合には高額療養費制度で、定められた上限額を超えた分が後で払い戻されます。

 その高額療養費の上限額が2025年8月から引き上げられる予定でしたが、国民からの反発があり政府が見送ることにしました。しかし、2026年以降に再検討することになっています。

 

 その昔、高齢者は医療費の自己負担がありませんでした。昭和48年の高度経済成長のピーク時、田中角栄内閣が「福祉元年」と位置づけて、老人医療の自己負担をゼロにしました。しかしその10年後には一部有料化としました。その理由は、高齢化に伴って老人医療費の国民医療費全体に占める割合が10年間で10.8%から22.8%まで増加して立ち行かなくなったためです。

 その後もその状況は加速し、2024年度の75才以上(2030万人)の医療費は18.4兆円と全体に占める割合は約4割となっています。今後も後期高齢者というグループを別枠にして、じわじわと負担は上がっていきます。

 

要素3 70才定年と年金受給年齢の引き上げ

 2021年に高年齢者雇用安定法が改正され、企業に70才までの就業機会の確保の努力義務が課せられました。定年制の廃止、定年の引き上げ、継続雇用制度の導入、などからの選択です。2025年4月からは更に厳しくなり、従業員が希望する場合、企業は65才までの雇用機会を確保することが義務づけられました。また、定年を65歳未満に設定することが禁止されました。

 勿論、将来の年金受給年齢の引き上げがセットになってきます。国が「年金を払いたくないので、企業で支払ってね。」と言っているようなものです。企業側としてはたまったものではありません。経営状況が極めて順調な会社は良いでしょうが、そうでない会社にとっては労務費の負担はとても大きいのです。労働生産性が上がるではないか、というかもしれませんが、そんな簡単なことではありません。2024年末の厚生労働省の発表によれば、まだ60才定年としている企業は66%もあり、70才以上の定年制を導入している企業は2%にとどまっています。

 働く側のサラリーマンの目線ではどうでしょうか? 70才まで働き、その間年金受給額と同等以上の給与を貰えるのであれば良いですが、中小企業の場合は企業側にはそれほどの体力はなく、多くの場合最低賃金レベルでの処遇を考えるため、生涯収入は減少することになります。年金受給額相当の収入を手に入れるためには副業を持つ必要が生じるかもしれません。60才で退職して退職金をもらって住宅ローンを一括返済し、その後会社に再雇用されて10年間は低賃金で働きながら副業も頑張る。60代はもしかしたら最も過酷な10年間となるかもしれません。

要素4  現役世代の収入が減っている。

 岸田文雄内閣の前後に日本の景気対策として「賃上げ」を進めてきました。最低賃金も毎年大幅に上がっています。私が昨年までの会社勤めの時は請負事業を行っていたため、請負元に対して価格転嫁を求め続けていました。「御社は今世の中で話題になっている価格転嫁を認めないと言うのですか?」というのを最終文句にしていました。

 賃上げの結果、従業員の収入は少しずつ増えています。ところが、長く続くデフレと物価高騰によって実質賃金は下がっているのが実情です。

 それに加えて、退職金の額が以前に比べて何故か減っています。厚生労働省が発表している「退職給付の支給実態」によれば、2008年の大卒の退職金の平均が2280万円だったことに対して、2023年は1896万円と15年で384万円も減少しています。これは、以前は長く勤めていたらある程度の退職金を受け取ることができましたが、最近はどれだけ成果を上げたかということで退職金の額を決めるような仕組みを入れる企業が増えてきたからだと思います。

 私が勤めていた会社もそうしていました。勤続年数は変えようがないのですが、成果の物差しは自由に設定できるので、企業にとってはそれを調整弁にしてコストの調整ができるわけです。この成果主義の導入で、昇格や出世を遅らせて毎年の収入も調整できます。

 更にこの問題の深刻なところは、サラリーマン自身がこのことに気づいていないことです。日本FP協会の調査によれば、退職金の金額を「全く把握していない、あまり把握していない」の合計が5割を越えていました。

 また、企業型確定拠出年金(DC)を導入して、その後の運用を従業員の責任にするということも行われています。

 

 世の中が不安になる4つの要素を説明したことにより、更に老後の不安をあおったようになりましたが、多くのサラリーマンの方はそれほど心配する必要はありません。

 老後の貯蓄ゼロという方は少し早めに手を打ったほうが良いかもしれませんが、少しでも貯蓄がある方は何とかなります。

 「蟹は甲羅に似せて穴を掘る」と言われます。自分の甲羅よりも大きな穴は必要ないのです。人間も同じで、自分の収入と貯蓄の範囲で生活すれば良くて、足りないと思えば収入を増すか、あるいは支出を減らせば良いだけです。

 そもそも、老後2000万円の計算の根拠は、65才男性の家計支出を前提としています。80才になっても65才の時と同じように食費を使ったり、娯楽を楽しんだりするようなことは一般的にはあり得ません。家計支出額は加齢とともに必ず減っていきますので、そこは安心してくだい。

 私が子供の頃は、大家族だったこともあり本当に質素な生活でした。食事も質素で家で育てた野菜だけで食べたりしていました。服も学生服以外の服はほとんど持っていませんでした。でも皆がつらい思いをしていたわけではありません。戦後しばらく経過して、経済が高度に成長していく中で将来への希望を持って暮らしていたと思います。

 ただ問題は、その頃幼少期を過ごした団塊の世代以降のひとたちが、経済が成長したあかつきには自分たちは贅沢ができるようになる、と思い込んだのかもしれません。そのひとたちが先導しながらバブル時代を通過し、日本人を贅沢にしたのです。現在は当時の高度経済成長期とは違い、少子高齢化で世の中に閉塞感のようなものがありますが、打ち出の小槌はありません。私は贅沢をやめることが近道だと思います。昔は質素でも生活できたのです。

 日本銀行が2024年に発表した「家計金融資産」は2212兆円で、前年同期比4.6%増となっています。新NISAなどの仕組みが資産を増やしたとも言われています。これを日本の世帯数で割れば1世帯に4千万円以上の金融資産があることになります。一部の富裕層が平均値を上げていることは確かですが、一定の金融資産は多くの方が保有しているようです。

 本書は平均的なサラリーマンを念頭にしてまいりますのでご容赦願います。

② 老後経済の具体的な算出方法

 老後の収入と費用は人それぞれなので、2000万円という数値に一喜一憂しても仕方ありません。世の中で唯一無二のご自身の「老後経済の設計図」を考えることをお勧めします。

 巻末の図表1をもとにして説明してまいります。なお、これは私独特のやり方なので、皆さんで好みに合わせてアレンジしてみてください。

 まずは家族の年齢の推移を見ながらイベントを予定していきます。家の改修、マイカーの買い替え、子供や孫の入学・結婚、といったイベントを想定しながら大胆に記入します。

 次は収入と支出を記入します。給与所得や年金受給額、個人年金などがあれば記入します。最後に現在の金融資産を記入します。株や投資信託などは時価評価してみましょう。金融資産に関する運用利益は、収入の欄に大まかに入れてみて下さい。

 支出のうちで生活費は、家計簿をつけていない場合は把握しにくいものです。その場合は、1年前の預金残高と現在の残高を比較して、1年間の収入と特異な支出額を差し引きます。そうすれば大まかな年間生活費は把握できます。

 夫の死亡年齢を仮に90才としてみましょう。

 表が完成したら、毎年の年末資金残高を確認します。残高がマイナスになれば借金をしなければなりません。それを避けるためには収入を増やすか、支出を減らすしかありません。収入を増やす方法としては、夫が退職後の給与所得を得る、資金ショートまでの期間があるのであれば、金融資産の比率を少し増やす、といった対策が考えられます。

 住宅の見直しで資金を調達する方もいます。私の友人でマンション入居の方で、子供が育って広いスペースが必要なくなり、売却して少し狭いマンションを買い直した方がいます。住んでいたマンションの価格は高騰していて、購入した価格よりも1000万円も高く売れたそうです。買い換えたマンションは少し狭くて安い価格だったので、1000万円以上の資金を確保できたそうです。

 支出を減らす方法としては、マイカーの買い替えサイクルを長くする、というのもありです。今の日本車は20年くらい軽く走れます。そもそもマイカーが必要なのか、という検討も必要です。マイカーを維持すれば税金、保険料、メンテ費用、車検代、ガソリン代、高速代と使います。年間維持費の平均は軽自動車で32万円、普通自動車で45万円だそうです。購入しないで必要な時に借りる、という方法もあります。カーシェアやレンタカーです。私自身、最近レンタカーを借りました。親戚の家で法事があり、その土地の天気は雪の予報でした。車以外の交通手段はなく、10年に1回使うようなスタッドレスタイヤを買うのはもったいないので、スタッドレスのレンタカーを借りました。

 また、保険の見直しも効果があります。これは私の個人的な意見ですが、入院した時の医療保険というのがあります。CMに出てくるネット保険会社で私の保険料を見積もってもらったら、入院給付金を日額5000円もらうには、毎月の保険料が3921円と試算されました。これだと毎年10日間以上入院しないと元が取れません。だから私は入院給付金に興味はありません。ただし、三大疾病への対処は重要かもしれません。

 死亡保険金も検討の余地はあると思います。90才で死んで3000万円の保険金を貰ってどうする、といった観点です。ただし、夫が死亡したら遺族の年金受給額が下がることや、葬儀代がかかること、500万円までの保険金の受取りには相続税がかからないといったことは考慮した方が良いと思います。

 犬やネコを飼っておられる方には叱られそうですが、ペットを飼うには結構お金がかかります。購入したり迎え入れる費用のほかに一緒に暮らすための生活費がかかります。1年間にかかる費用の平均は犬で34万円、ネコで17万円だそうです。犬1匹とネコ1匹だと年間50万円です。食費、ペット用品、追加光熱費、健康管理・医療費、ケガ・病気のときの治療費、シャンプー・カット・トリミング料、その他ペットホテル、トレーニングなどの費用です。それほど使っていない、という方もおられると思いますが、あくまでも平均値です。年金収入に占める割合は結構大きいです。

 意外に気づいていない支出でサブスクがあります。動画配信、音楽配信、ジムなどの定額料金を支払って使い放題というサブスクリプションサービスです。月何回利用するかで利用の価値があるかどうかが分かります。あまり使っていなければ解約を検討するのがお勧めです。私の家の近くのスポーツジムは、月謝が6800円ですが、同じく近くの市民体育館だと1回600円です。月に10回も行かないので私は市民体育館を選んでいます。市民体育館と言っても、あなどる事なかれです。最近はやりの格安ジムに比べると設備は圧倒的に充実しています。自治体にもよるとは思いますが・・。サブスクとは企業が儲かるものです。

 私のような喫煙家の方は、禁煙すると家計支出はかなり減るようです。一般的な紙巻きタバコ1箱の価格は580円です。このうち6割が税金なので、かなりの高額納税者です。毎日1箱吸う場合、1カ月のタバコ代は1万7000円、1年間で20万円を超えます。私のように禁煙が嫌な方は、580円のタバコを430円のものに変える方法もあります。年間で5万5000円ほど削減できます。

 サプリメントは世の中でよく売れているようです。シニアにとってのサプリメントの消費は、健康維持や病気予防が主な目的のようです。特に骨粗しょう症予防のカルシウムやビタミンD、心血管疾患予防のオメガ3脂肪酸、認知症予防のDHAやEPAなどが人気のようです。シニアのサプリメントの平均的な月間支出額は3000円から5000円程度のようですが、健康状態によっては更に高額なサプリに投資する方も結構いるようです。「サプリメントは一部を除いて疾病予防効果はない。」と言う医師がいますが、私は専門家ではないため分かりません。

 以前私は一度だけ、血圧を下げる効果があると言われるサプリメントを飲んでいたことがあります。3年くらい飲んでも効果はなくて、知り合いから「病院で薬をもらったほうが安くつくよ。」とアドバイスをもらったので薬に変更したら血圧はすぐに下がりました。それ以来、私はサプリを購入することをやめています。飲んでいるサプリの効果を検証してみるのも大事かもしれません。

 支出の見直しに関して注意が必要なのは、何でもカットすれば良いというものではありません。大事な趣味をやめてしまうとか、楽しみにしている家族旅行をやめてしまうなど、サラリーマンが老後を活き活きのびのびと生きようとしている真逆のことは、できるだけ避けた方が良いです。ペットの飼育はやめて下さいとは言っていません。ペットを何よりも愛している方に対して失礼です。

 老後のシミュレーションにあたっての重要なポイントは、夫がご逝去される年齢を90才と仮に設定しているところです。前述のとおり、男性の平均寿命は現在81.09才です。90才に設定しているのは遺族年金の影響を見るためです。遺族厚生年金は、老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額です。つまり、夫が長生きすればするほど所帯収入は多くなるわけです。(奥様の年金の方が多い場合は別です。)だから収入が多くなる90才のシミュレーションを行い、次に85才、80才のシミュレーションを行ってみてはいかがでしょうか?80才のシミュレーションは90才のものよりも少し厳しくなると思われます。

 ただし、ここでのシミュレーションでの年間生活費は75才まで360万円、75才以降は300万円としていますが、夫が亡くなって奥様が一人暮らしになった場合の生活費は大分と少なくなると思います。

 想定しにくいのは老後の医療費と介護費です。私は大丈夫と思っていても、人間の体は分からないものです。一般的には老後の医療費は3~400万円、介護費は250万円程度と言われますが、大事なことは、予防です。会社勤務時は毎年健康診断や人間ドックをやっていて、専業主婦の奥様も会社の健康保険を使って健康診断をしていたのに、退職後は夫婦そろって健康診断をしないという方がいます。定期的な健康診断にコストをかけることは決して無駄ではなく、結果的には家計を助けることにもつながります。癌の早期発見は意味があります。これまで私の知人で若くして癌を患った方は多くいましたが、早期発見の方はほとんど完治されています。

 私の場合、マンション暮らしなのですが、終の棲家も考えておかねばなりません。自力で生活ができなくなった場合は高齢者住宅への入居を考えています。高齢者住宅といっても、サービス付高齢者住宅、介護老人保健施設、介護医病院、グループホーム、有料老人ホームなどピンからキリまであります。入居費用が5000万円、月額費用が40万円など、とんでもない物件もありますが、普通のサラリーマンは無理です。自分の背丈に合うものを探します。その際私は今住んでいるマンションを売却し、その売却収入を活用することにしています。マンションを相続するのではなく、死んだ時にお金が余ればそれを相続すれば良いという考え方です。不動産の規模や種類にもよりますが、中途半端な不動産を相続で受け取ることは、受け取った方の負の遺産となる場合が多いものです。相続した不動産には固定資産税や維持費がかかります。そんなことを皮肉って「負動産」という言葉もあるようです。

 配偶者に先立たれたら家を売却して賃貸に住みたい、という方がいますが、これはうまくいかないようです。というのは、70才を過ぎた1人暮らしの老人には賃貸住宅の入居許可が出ないためです。独居老人の孤独死や家財の放置を嫌がるのです。身元保証人をつけても難しいと思います。老夫婦がマンションで生活していて、夫に先立たれた奥様がマンションを売却して賃貸住宅に入ろうとしたところ、どこを探しても入居できず途方に暮れた結果、「また別の中古マンションを買い直しました。」という記事を見たことがあります。

 頼れる親族がいない単身高齢者は今後増えていき、15年後(2040年)には1000万人を超えると言われています。身寄りのない高齢者向けには民間サービスがありますが、費用が高額であるため利用できる方は一部の富裕層だけです。社会福祉協議会が金銭管理などをサポートする事業もありますが、利用できるのは認知症の人に限られています。入院や介護施設への入所の時、本来は身元保証人は必須ではないのですが、2021年の国の調査では、病院や介護施設の9割以上が身元保証人を求めていました。2023年の調査では、親族ら引き取り手のない遺体は全国で4万人を超えていたようです。

 厚生労働省では、2年後(2027年)に向けて、これらの高齢単身者の方を対象にして、入院や老人ホームへの入所、葬儀を含む死後の事務処理手続きを支援する仕組みを創設するように検討しているようです。利用料は所得に応じて設定し、低所得者は無料や低額で使えるように公的補助を検討しています。

 戸建てでもマンションでも「リバースモーゲージ」を活用する方が増えているようです。リバースモーゲージとは、自宅を担保に生活資金を借入れしながら自らの持ち家に継続して住み続け、借入人が死亡したときに担保となっていた不動産を処分し、借入金を返済する仕組みです。いわば、高齢者向けの貸付制度と言えるでしょう。しかし、リバースモーゲージにはデメリットもあります。長生きすればするほど、最初に設定された融資限度額まで資金を使ってしまうリスクがある、生存中に土地・建物の価値が下落すれば、融資限度額の見直しが行われるリスクがある、変動金利のみのため、金利変動リスクがある、といったリスクも踏まえる必要はあります。

 リバースモーゲージに似た方法として、「リースバック」があります。リースバックとは、第三者に所有資産を売却すると同時に賃借する取引方法です。例えば、自宅を売却した上で居住物件を賃借することで、売却資金の確保と同時に住み続けることが可能になります。自宅のリースバックなら、思い入れのある住まいから転居する必要がなく、生活環境を維持しつつ資金を調達できるメリットがあります。また、固定資産税などの維持費の支払いがなくなり、マンションの場合は管理費や修繕積立金の支払いもなくなります。ただし、デメリットもあります。自宅の名義が変わることと、家賃が発生することです。自宅の所有権がなくなれば、自宅をお子さんへの相続ができなくなります。再度購入し直すことも可能ですが、そもそも老後資金が不足していた状態で再度購入することは現実的ではなく、それなら最初からリースバックをしない方が良いと思います。

③ 資産を増やす

 資産を増やす方法としては、節約、収入増、投資の3つから選ぶことができますが、家計においては借金で資金を増やすことはお勧めできません。利息の返済で余計に家計を圧迫してしまいます。

 金融資産が少ない場合には、投資よりも節約や収入アップのほうが向いています。投資によって100万円の元本を10年間で200万円にするためには年利7.2%の複利計算で回さなければなりません。これを72の法則と言います。20年間で2倍にするためには、7.2%の半分の3.6%の複利運用で可能となります。

 投資にはリスクも伴います。株式投資や新NISA、iDeCoなどの制度を利用するのは良いことかもしれませんが、まずは節約と収入増を検討してはいかがでしょうか?

 総務省が公表した家計調査を見ると、2023年の2人以上の世帯の消費支出のうち、食料の消費は月額で8万8554円ですが、そのうち外食代は1万4470円で16%を占めています。皆さんは平均値と比較していかがでしょうか? 外食を控えることは節約になります。また、通信費は1万2198円ですが、どうですか? また自動車関係費は2万5316円ですがどうですか? 被服及び履物は9644円ですがどうですか?

 これらの統計データは全世帯の平均ですが、世代別に見るとまた異なってきます。40才未満の世帯の消費支出総額は27万2648円、40~49才は32万3660円、50~59才は34万8025円、60~69才は30万6476円、それに対して70才以上の世帯は24万9177円となっています。70才以上となると60代と比べて5万円以上も下がっています。

 これは私自身への自戒を込めたコメントですが、老後を迎えても若い頃と同じような食材を調達していませんでしょうか? 年を取れば基礎代謝量は必ず減ります。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」を見ると、50~64才の男性の基礎代謝量は1480㎉に対し、75才以上の基礎代謝量は1280㎉です。高齢化して食が細くなったのちも「以前はこのくらい食べていた。」と言い張って、身体に必要以上に食べるところがあります。腹8分目を腹7分目にしても良いではないでしょうか? 

 家の隣に住む1人暮らしの女性の方から聞いたのですが、スーパーで野菜を買う時に袋単位では購入しないで、1個単位で購入すると言われていました。袋単位で買えば余ってしまって、結果的に廃棄することを避けるためだそうです。ムダなコストをなくすだけでなく、フードロス対策にもなっています。

 先日我が家では買い物をせず、何日かで冷蔵庫の中にあるものを一掃してみようと試みてみました。その結果、冷蔵庫の中を綺麗に拭き掃除をすることもできました。冷蔵庫の電気代は、中がスカスカになっていればあまり電気代はかかりません。ただし冷凍庫のほうは、ぎっしり詰め込んだほうが電気代はかからないようです。

 孫にお金を沢山使う方は多いようです。2025年に「ハルメク生きかた上手研究所」が行った孫を持つシニアを対象にした調査によると、孫に使うお金の平均額は年間約18万円で、2023年の調査と比較して3.7万円アップしています。0円の方も含めた平均値なので、20万円以上も24%います。これだけを見れば景気が良いように見えます。使い道で上位に挙げられたのは、お小遣いとして現金を渡す、次いで食事代、モノを買い与えるなどです。かわいい孫にお金を使うのは決して悪いことではありませんが、退職後、収入が減っても以前と同じように孫にお金を使って家計を苦しめている方もいるようです。

 今年は大阪万博が開催されている年ですが、資材の高騰による万博の建築費の増加が大きな問題となりました。そんな中で昨年、私は実家の家の建て替えをしたのですが、実際に以前の価格よりもとても高くなっていました。予算をかなりオーバーしてしまったため、ケチケチ対策を考えました。新しい家財を自分で作ることにしました。DIYなど経験したことがない私は、家を建てていただいた大工さんに相談してやり方を教えてもらいました。家を建てたときに余った木材はそのまま残置してもらってそれを活用しました。

 ユーチューブで専門家の動画もたくさん見ました。手書きで設計図を書き、まずはダイニングテーブルの作成です。テーブルのメインとなる天板を買い、カマボコの板にサンドペーパーを巻いて天板を磨きます。マスクをつけて磨くべきだったのですが、つけていなかったため喉を痛めました。天板の裏を板で補強し、ニスを2度塗りして脚をつけて完成です。ダイニングテーブルの次はテレビボード、部屋の置台、タオル置き場、エアコンの室外機のカバーなどを作りました。失敗も多く素人レベルの出来上がりでしたが、家具屋さんで揃えるよりもかなり安くつきました。資材の高騰分のリカバリまではいきませんでしたが、ケチケチを実践しました。 

 ただし、毎日のケチケチ運動は疲れます。「お金は使ってはいけないという呪縛から早く解放されたい。」などと毎日考えていたらたまりません。

 私は、高価な神戸牛のステーキを10年に1度ほど食べます。その時は満足するとともに「毎月食べる品ではないな。」と考えるようにします。ときおり贅沢をして、いつもは質素にするということが良いかもしれません。2人で6万円の神戸牛のステーキを食べたとしても、10年で割れば2人で毎月500円の贅沢です。

 老後にやりたいことの調査で、いつも上位にくるのは海外旅行です。海外旅行にも気軽に行ってみたいです。でも私はパックツアーをあまりお勧めしません。料金がとても高いうえに行動が制限され、ゆっくり見たい所も急かされてしまうからです。

 先日、新聞広告に掲載されていたのですが、フランスのパリ5日間の旅行で航空券とホテル代だけだと10万円以下で売っていました。凱旋門、エッフェル塔、ルーブル美術館、モンサンミッシェルとお決まりのコースをパックツアーのバスで回るのも良いですが、自分で切符を買って好きな時間を過ごして、一般的なツアーにはない現地の市場の野菜を見たり、現地の人が通うレストランに行ったりするほうが、コスパはいいと思います。

 言葉が通じないことを心配されるかもしれませんが、何とかなるものです。私は英会話が苦手ですが、若い頃、1人で海外出張に何度か行きました。ニューヨーク、サンフランシスコ、シンガポール、タイ、インドネシアなどでした。電車のチケットを買うこともできましたし、日本からホテルを予約して1人で宿泊することもできました。何とかなるものです。

 ただし、少し危険な思いをしたことはあります。ホールドアップ(銃を突き付けられて両手を上げること)の経験はありませんが、ニューヨークに1人で行った時、休みの日に街をあてもなく歩いて散策していたのですが、ハーレムのような街に出くわしてしまいました。あわてて来た道を戻って行って事なきを得たのですが、事前に危険なエリアだけは調査して行かれることをお勧めします。

 

 資産を増やすもう1つの方法は収入を増やすことです。前述のとおり、投資で財産を増やすという方法があり、政府も「貯蓄から投資へ」などと勝手なことを言っています。しかし、投資には株価や基準価額が変動するなどのリスクがあるため、事前に知識をつける必要があります。投資には、元本が保証されていないというリスクもあります。また、税金や手数料を取られることにも注意しましょう。景気が大幅に悪化して投資した全額がなくなっても生活に支障が出ないように、余剰の資金を投資に回すようにしましょう。金融資産の半額を投資に回すようなことはお勧めできませんし、特にハイリスク商品への投資は金融資産の10分の1以下に抑えたほうが良いです。

 堅実な方法としては、定期預金を積立定期預金に回す方法があります。毎月少額を定期預金に積立できるので気軽です。面倒がる方でも強制的に積み立てが継続できるためお勧めです。

 積立NISAも良いかもしれません。2024年から積み立て投資枠が年間120万円に拡大され、成長投資枠と合わせれば年間360万円となりました。非課税枠も1800万円まで拡大されました。

 

 少し話がずれるようですが、私はリサイクルショップを良く使います。ネットオークションやフリマは利用しませんが、近くにリサイクルショップがあるので良く通っています。何でも売っていて家電製品をよく買います。3年落ちくらいなら新品同様で、非常に安く買えます。20万円のテレビの寿命が10年としたら年間コストは2万円ですが、5万円で7年使えれば年間コストは7千円で3分の1程度になります。

 また買い取りもしてくれます。老後は物を手放すことです。1年間使わなかった物はその後も使いません。新しい物を1つ買ったら古い物を3つ捨てるくらいがちょうど良いと思います。捨てるのはもったいないので売ります。こんな物が売れるかなというのも売れます。先日、リビングに昔から置いていたソファーが邪魔だったので処分したら、とてもスッキリしました。こうして収入を得ることもできます。

 

 もう1つ効果があって大きい収入になり得るのが、退職後に働くことです。フルタイムでなくとも1日3 時間、週3日パートで働けば、月4万円くらいにはなります。少し頑張って月に2万円の節約ができれば、月に6万円のキャッシュが増えることになり、10年では720万円のキャッシュが増えて、だいぶ楽になります。

④ 老後を働く

 65才以上の方で働いている方は多いです。毎年、敬老の日に総務省が65才以上の就業者数を公表していますが、2024年の公表では、65才~69才で見ると52%の就業率と2人に1人が働いています。70才~74才は34%で3人に1人、日本の全就労者のうち高齢者の割合は13.5%で7人に1人を高齢者が占めています。産業別では卸売業・小売業が132万人でトップ、医療・福祉が107万人、サービス業が104万人と続きます。

 そもそも、日本の高齢者の人口の割合は世界の中で突出しています。世界中の人口10万人以上の200カ国・地域の中で、日本の高齢者の割合はとうとう首位に立ちました。

 働く理由はさまざまなようです。経済的な理由で働く方、退職後に暇をもてあまして仕方なく働く方、人とのコミュニケーションを取りたいために働く方、生きているうちは少しでも社会に貢献したいと思って働く方、人から頼まれて働く方、それら複数の理由で働く方、さまざまです。また、収入を得るためではなく、ボランティアで働く方もおられます。

 私も昨年64才で会社生活を引退し、今年65才からはスタートアップというほどではありませんが、自営業を始めました。でも世の中はそんなに甘くはなく、自営業の経験もない私がそんな簡単に成功できるとは思っていません。失敗した後に何をするかを検討中です。自営業を始めた直後から失敗したときのことを考えるとは情けないものですが・・・。

 求人情報をくまなく見ましたし、ハローワークにも相談しました。高齢者を採用する企業は限られていますが、「65才超雇用推進助成金」という企業が高齢者を雇用すれば助成金がもらえるという制度もあり、積極的に雇用している企業もあります。

 圧倒的に求人が多いのは介護・警備・清掃です。申し込んだらすぐに採用してくれると思います。昔から3Kという言葉があります。「きつい、汚い、危険」ですが、最近は6Kという言葉もあるようです。3Kに加えて新3Kの「帰れない、厳しい、給料が安い」がプラスされます。介護・警備・清掃のすべてが6Kではありませんが、若い人たちは嫌がるところがあり、高齢者や外国人労働者が対象になりやすい職種かもしれません。体力に自信がある方にお勧めです。

 私は体力には自信がないので、私ができそうだと思った職業をいくつかご紹介します。ただし、私のような喫煙家の方は要注意です。喫煙家ができる職業は本当に限られています。なお、私の地元で調べたため、少し偏りがあるかもしれません。また、男性目線となっていることをお許しください。

マンション管理人】退職したサラリーマンの方の王道の職業です。

 主な仕事は、訪問者の受付対応、設備の点検と巡回、清掃、入居者や退去者・ゴミ回収業者の立ち合い、管理会社の補助と報告、といった内容です。シニア世代は人生経験が豊富なため、入居者についてのさまざまなことに対応できると期待されています。掃除が好き、人と接することが好き、体を動かすことが好きといった方に向いています。フルタイムばかりではなく、午前中だけというマンションもあります。私の知り合いで、管理人が休むときのピンチヒッターをやっている方もいます。ただ、喫煙家は無理だと思います。喫煙場所はほぼありません。

タクシー運転手】シニアが働く仕事の中で高額収入が得られる仕事です。

 顧客を獲得するためのノウハウを見つけるには地道な努力が必要で、人生経験が豊富で辛抱強いシニア世代はタクシー運転手として成功できる方が多いそうです。業界に就職する方の7割が未経験からのスタートで、2種免許の取得費用を負担してくれる会社もありますが、負担する年齢制限はあるようです。65才以上の方が占める割合は、男性で45%ほどらしいです。給与体系は基本的に歩合制で、70才以上のタクシー運転手の平均年収は全国平均で302万円だそうです。

 今朝の新聞に入っていた求人広告には「月40万円以上稼いだドライバーも多数」と書いてありました。しかし、私はタクシーに乗ってシニア運転手に出会った時、私から「手取りは20万円を超えますか?」と何度か質問をしたことがあります。すべての方が「手取りは20万円を超えない。」との回答でした。つまり給与の総支給額は20万円を超えているのでしょう。

 長野県に月の手取りが150万円を超えることがあるというタクシー運転手がいます。白馬などのスキー場で外国人スキー客の対応をされています。何故高額の収入になるのかと言えば、長野からの帰りに羽田や成田の空港までタクシーに乗る外国人観光客がいるためです。英語ができない方も頑張っているようです。季節労働ですが、少しでも英語が話せるのなら、普段は地元で運転してシーズンには出稼ぎをしても大きな収入になります。ただし、雪道の運転は非常に難しいです。昔、スキー宿にタクシーで向かう途上、車の後部をスウィングさせながら運転するタクシーに乗りながら、「自分には無理だ」と感じました。

 タクシー運転手の方で、こっそりと喫煙をしている方はいます。ちなみに私の近所のタクシー会社が出している募集要領の勤務時間は次のとおりでした。  

早日勤務:6時〜15時、7時〜16時の2シフト制、遅日勤務:17時〜翌2時・18時〜翌3時の2シフト制、週単位で、早日勤務と遅日勤務の交代制

タクシー以外の運転手】大型免許をお持ちの方は引手あまただと思いますが、普通免許でもハイエースクラスが運転できればいくつか対応できる職業はあります。

 訪問介護者の送迎(介護士が同乗するため、乗客の乗り降りはサポート程度です。)、透析患者の病院への送迎、保育園や学習塾の児童の送迎(学習塾は深夜あり)、自動車教習所の生徒の送迎、高齢者への宅食の配達などです。

 運転には注意が必要ですが、気軽にできる職業だと思います。宅食などの配達の仕事については少しだけ注意が必要です。簡単な仕事に見えますが、配達先にエレベータが必ずあるとは限りません。私は昔、コスト削減のためにポスティングの仕事を引受けたことがありますが、エレベータのない団地の階段を使って昇り降りするのは、かなりの体力が必要です。

 運転の仕事は、いろいろな人たちとのコミュニケーションが取れる仕事ですが、これも喫煙者は難しいかもしれません。募集要領の中に「車内禁煙」と明記しているところもあります。

 1人作業での運転の仕事としては、新聞配達があります。短時間の勤務なのであまり多くの収入にはなりませんが、朝刊は5時過ぎには配達が完了するので、朝早くだけ働くというのも良いものです。ただポスティング作業に近いものがあります。また、1人作業ということでは、コイン駐車場の集金業務というのがあります。駐車場の機械からお金を集金するとともに機械の数値を報告するような仕事です。 

ゴルフ場で働く】ゴルフが趣味のシニアの方はもちろん、体を動かすことや自然が好きな方にお勧めです。

 来場者のゴルフバッグを積み下ろしするポーター、マスター室でのプレーの進行管理、キャディ、コースやグリーンやバンカーなどを整備するコース管理、風呂の清掃、レストランなどいくつもの職種があります。ゴルフ場によっては、閑散期に格安でプレーをさせてくれるところもあります。

 また、ゴルフ場ではなく、ゴルフ練習場でのパートの仕事もあります。打ちっぱなしのゴルフボールを回収したり、設備のメンテを行ったりします。喫煙所はどこかにあると思います。

 

施設の管理人】地元の公民館、体育施設(テニスコートや運動施設)、駐輪場、植物園、墓地などの管理人の仕事です。

 体育館などでは、シニアを対象にした運動や趣味や生涯学習などのスクールが多く開催されていて、その受付、スケジュール管理、場所の設営などを行う仕事です。

 駐輪場の管理とは、有料駐輪場の交通警備もありますが、最近は駅でレンタル自転車を利用する方が多くなりました。これは駐輪場使用料よりも自転車のレンタル料の方を割安に設定しているため、通勤自転車を購入しないでレンタル自転車を利用する方が増えています。この利用者の対応業務です。これらも人とのコミュニケーションができる方が向いています。

事務職】高齢者には事務職の道は狭いと思います。

 年明けにNPO法人などが事務職を募集することはありますが、狭き門だと思います。

 病院や薬局の受付に主婦の方がいる光景は良く見ますが、高齢者の男性が受付に立っている姿を私は見たことがありません。病院だと、夜間の緊急患者の受付夜勤くらいでしょうか。

 でも経理業務の経験がある方だと、会計事務所や司法書士事務所などの経理業務の募集はあります。大学の授業のサポート業務の募集も見たことがあります。授業の準備をしたり、資料を作成したりします。また、学習塾の作文の添削をする仕事もあるので、興味のある方は探してみてください。

 私でもできそうな仕事を中心にご紹介しましたが、シニアでもできる仕事は他にもいろいろあります。

学校の用務員(公立だと時給以外にボーナスが出る所もあります。)、セルフのガソリンスタンドの監視員(危険物取扱者の資格が必要ですが、少し頑張れば取得できます。)、高速道路の料金スタッフ、工場内での簡易な作業員、などなど。

 スーパーでシニアの方がカートの整理をやっている姿を良く見かけますが、家の近くで顔を見られるのが恥ずかしいという方は、少し離れたスーパーにするか、それとも早朝スーパーにトラックから運ばれた食材を、伝票に従って台車で運搬するという仕事もあり、これだと顔をさされることはありません。

 現役時代に取得した資格を活かしている方もいます。社会保険労務士、宅地建物取引士、マンション管理士、介護福祉士、電気主任技術者などの資格をお持ちの方は有利です。

 私は、シニアの皆さまに対して「老後も必ず働くべきだ」などと言うつもりは全くありません。

 老後の資金に少し不安のある方、社会とのつながりを持ちたいがその手段が見つからない方、身体を動かして健康を維持させたい方、長いシニア人生の中に働くことを取り入れたい方、そういった方への選択肢として紹介しているだけで、働くことに必要や興味を感じていない方はそれで良いと思います。

 私自身、退職後に仕事をすることなど全く考えていませんでした。長く働いたのちは、旅行に行ったり、美味しい物を食べたり、ゴルフ三昧などして、まったりと過ごそうと思っていました。しかし、シニアという世代に突入した瞬間に(正確にはその直前に)、これからの人生の長さに驚いてしまいました。

 実は退職前、自分の祖先のことを調べたのですが、私の父は91才での大往生、その父は75才、その父は江戸時代の生まれになりますが73才、その父は75才、その父は73才と、江戸時代の頃の祖先が大変な長生きをしていたことが分かったのです。江戸時代には戸籍もなく、平均寿命などのデータはありませんが、一般に言われているのは、鎌倉時代から江戸時代の大人の死亡年齢は50才くらいとのことです。「親知らず」という歯がありますが、親知らずの歯が抜ける頃には親は死んでいる、と言う意味だという説があるらしいです。早く死ぬ方が多かったため、平均寿命は20代後半とも言われています。そんな時代に祖先がすべて70半ばまで生きていたということは、私に長生きのDNAがあるのではないかと思い、老後の長さを感じた次第です。

 シニアで働いている方とお話をすると、意外な答が返ってくることがあります。

 「サラリーマン時代は給料をもらうことが当たり前のようだったが、パートとして働いて少額だけど給与をもらうと、とても嬉しい。」とおっしゃっていました。サラリーマンの給料とシニアの給料では何か違いがあるようです。

 私は、現役時代にはパートの方をできるだけ大切にしてきたつもりです。とても貴重な戦力であることはもちろんですが、社員ではないにもかかわらず責任感を持って取り組んでくれる方が多くいて、社員よりも責任感旺盛な方もいました。でも定年退職される時は、勤続20年の方でも退職金もないことを心苦しく思い、私は書けないのですが妻が書道をやっていたので、妻に手書きの退職感謝状を書いてもらい、記念品を添えて退職時にお渡しするようにしていました。(今はそれを仕事にしています。)

 社員は時給で働いたことはありません。1時間ずつしっかりと働いて、その積み重ねが給料となることに働く喜びがあるのだと思います。

 少し話がずれますが、昨年から今年にかけて国会で103万円の壁や106万円の壁の議論が行われています。社会保険の壁である106万円の壁は、実際は年収106万円の壁ではなく、正確には月額8万8千円の壁です。これを越えると社会保険に加入しないとならなくなるため、扶養の範囲内で働く方は働き控えをします。

 月額8万8千円以下に計画しておかないと、突発的なことに対応できません。したがって、月収は8万8千円以下になり、年収で言えば106万円など到底達しません。忙しい時期に働き控えをされると困ります。更に最低賃金が大幅アップとなっています。2025年8月に発表された中央最低賃金審議会の答申は6%の上昇としました。年収の壁に対して最低賃金が上昇することにより、働ける時間が一段と少なくなっていて、企業の現場は大変な状況になっています。「社会保険に入れば将来の年金収入が増えますよ。」と説明しても、まったく聞き入れられません。20才代の方ならともかく、50才代以降の方が新たに社会保険に加入しても、年金がプラスとなる金額は保険料の掛金よりも少ないためです。加入するメリットがないのです。

​ 2025年、所得税の壁が103万円から160万円に見直されましたが、これだけだと解決しません。社会保険の壁、扶養手当の壁が残っています。

 私はこのような小手先のことをやるのでなく、抜本的な制度改革が必要だと思っています。今のような壁を引き上げるようなことでなく、壁をなくすことです。専業主婦を優遇している「3号被保険者制度」を当面は不利益が出ないように配慮しつつ、廃止しなければ解決しないと思っています。そうすることで今の労働力不足はかなり解消できます。

 

 企業側にとっては、社会保険料の負担増は結構厳しいです。社会保険に1人加入すれば、最低でも年間20万円程度の企業負担が発生します。100人だと2,000万円です。先日、「106万円の壁が見直されることによる社会保険料の負担に耐えられないため、廃業する。」という会社がとうとう出て、それが報道されました。価格転嫁ができれば良いのですが、できない業種も多くあります。

 最近、ラーメン屋さんの倒産が多いようです。労務費や野菜などの高騰が続く中で、ラーメン1杯を1,000円以上にしたいところ、1,000円以上にすればお客様が離れていくそうです。その対策として、チャーシューなしのメニューを出したりするそうです。価格転嫁をしっかり行って、チャーシュー付きで1,000円以上でもラーメンが食べられるような世の中にしていかねばなりません。

 

 もう1つは、在職老齢年金の支給停止の仕組みも見直すべきです。シニアが頑張って働いたときに年金額の一部が支給停止になるのであれば、働きたいというインセンティブが削がれます。本当に資金不足で困っているシニアの方を制度が邪魔をしています。日本の労働力不足を補うためには。主婦層やシニア層が働きやすい環境を作ることが大切です。

 それと並行して取り組んでいくのが、外国人労働者の雇用拡大と企業の業務の効率化だと思います。私は若い頃から多くの外国人の方と仕事をしてきましたが、皆が優秀でした。何故なら優秀な人材が日本に来ているからです。一部の地域に不法滞在するような外国人の事案と労働力不足は分けて考えるべきです。

 

 業務の効率化については、IT化とかAI化といったことが言われています。サラリーマン時代を振り返れば、無駄な仕事が多くありました。今でもあります。日本の事務職サラリーマンの業務内容のうちで「転記作業」という仕事の割合が非常に多いようです。データを右から左へ転記するという作業です。そんな作業はシステム化できて、生産性を上げる手段はいくらでもあるのにできていません。システム化と言っても大したことはありません。アルゴリズムが理解できなくても簡単にできるツールもあります。このような仕事の仕方をしていては労働力がいくらでも必要となり、日本の国際競争力を高めることはできません。

 もう一つ、消費税の減税についても参議院選挙で議論が行われていました。例えば「物価高対策として、しばらくは5%として、実質賃金がプラスに転じた時に10%に戻す。」といった議論などです。現場の対応はどうでしょうか? 街中の声として「税率の変更は簡単に対応できる。」などとの声が紹介されますが、それができるのは中小企業だと思います。大企業は基幹システムを構築しているので、システム改良には億円単位のコストが発生することがあります。零細企業はどうでしょうか? 昨年2024年7月に新札が発行されました。しかし1年経過した今、地方の食堂に行けば、食券販売機に「新札は両替しますので声をかけてください。」と貼り紙がされています。現場の対応はそれほど簡単ではありません。

 二 趣味を作る

 私はそれほど多趣味ではないので、偉そうに言う資格はありませんが、シニアになって色々な趣味をお持ちの方がおられます。私がやってみたことや興味を持っている趣味をランキング形式でご紹介します。興味がある部分を読んでください。

 【第1位】国内旅行

 海外旅行も良いですが、国内旅行はパスポートも不要で手軽に行けます。私自身、全国47都道府県のうちで行ったことがない県が4つあるので、近いうちに制覇したいと思っています。パックツアーはたくさんありますが、私はマイカーかレンタカーを使うことが多いです。パックツアーの中にレンタカー費用が含まれているものもあります。例えば、仙台空港まで飛行機で行き、そこにレンタカーが用意されていて東北各県を運転して観光地を回るというものです。ただし、当日の決められた宿には必ず到着しなければなりません。私の残り4県の中に青森、秋田、岩手が入っているので狙っています。

 私の妻の友人で、老後にキャンピングカーを買って夫婦で日本中をまわり、夫婦共通の趣味であるゴルフを日本各地でやっているカップルがいます。千葉県に住むご夫婦なのですが、「今、四国」などと妻にLINEが来ます。私には年間の大半の時間を妻と一緒に過ごす自信はありません。

【第2位】DIY(日曜大工)

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 これは先ほどもご紹介しましたが、ユーチューブを見ると高度な技術を学ぶことができます。

 私は最初、ダイニングテーブルを作りましたが、長さ180㎝の天板は8千円ほどでした。杉の木の一枚板などにすれば3万円くらいになりますが、一枚板は木が乾いてくれば表面が反ってしまい、裏に添え木を付けてももちません。私は反りにくいパイン集成材を使いました。4本の脚が1万円だったのでニス代などを加えて2万円くらいでできました。この大きさのテーブルを大手家具メーカーの〇〇で探したら7万円はします。出来栄えは違いますが、使い勝手は変わりません。

 

 ウッドデッキをDIYで作ることもできるようです。人工木の材料で資材をそろえれば1㎡あたり2万円以内で済みますが、プロの業者に依頼すれば相場が1㎡あたり3~4万円なので、その分高くなります。完成した時の喜びは大きいと思います。物を作るという喜びを味わうことができます。ただし、屋外での木材は腐ったりシロアリ被害もあるので、メンテナンスは重要です。ゼロからは無理だという方に向けた組立キットも売っています。

【第3位】家庭菜園・ガーデニング

 自宅で気軽にできるので、シニアの多くの方がやっておられます。マンション暮らしの方でもホームセンターで鉢やプランターに培養土、そして種や苗を準備すればOKです。

 私はこれもユーチューブで教えてもらいました。野菜を自分で育ててその食材を食べることは楽しいものです。プランターで育つ野菜は、春夏あればナス、ミニトマト、キュウリ、ゴーヤ、シソ、ニンジン、サニーレタス、枝豆といったものがあり、秋冬だとダイコン、ホウレンソウ、ジャガイモ、タマネギ、コマツナといったところでしょうか。バジルなども人気があるようです。

 私は最初、マンションのベランダで枝豆を育てました。ユーチューバーの解説では、苗からではなく種から育てた方が良いとのこと。苗はうまく育たなかった場合は諦めるしかないのですが、種から育てるとうまく育ったものを選べば良くて、成功の確率が高いそうです。枝豆は房を摘んでから劣化が早いため、摘む前に鍋でお湯をわかしておいて、摘んだらすぐにお湯に入れます。茹で上がった枝豆をツマミにして飲んだビールはとても美味しかったです。

 本格的な菜園をやりたい方はシェア畑というのがあります。私自身、会社員の頃に会社の遊休土地を活用してシェア畑を運営していたことがあります。野菜をスーパーで買うより安くつくとは考えてはいけません。高くつきます。作ることを楽しんで無農薬の野菜を食すという類のものです。野菜の種や苗、肥料、農具は全て完備しているところもあります。私の家の近くのシェア畑の料金は、入会金1万1000円、3㎡で月額7900円、4.8㎡で月額1万900円となっていました。料金に含まれているのは、農具資材、種苗、アドバイスという内容です。私がいた会社のシェア畑は畑にカメラを置き、野菜の成長状況が自宅からライブ映像で確認できるようにしていました。

【第4位】ゴルフ

 シニアになったら思いっきりゴルフを楽しみたいという方は多いです。

 会社生活をしていたら土日にしかゴルフに行けない方が多く、土日はゴルフ場の料金は高く、なおかつゴルフ場が混んでいます。ウィークデーの安くてすいているゴルフ場に通いたいとサラリーマンゴルファーの多くの方が思っていて、シニアになればそのキップが手に入るわけです。私はゴルフでは、5つのゴルフグループに入っています。いろんな方とプレーして新たな知り合いができ、いろんな話を聞かせてもらうことが自分自身の刺激になっています。

 ゴルフに似た競技で、ゲートボール、グランドゴルフ、パークゴルフというのがあります。80代の方を含むシニアの競技者が圧倒的に多いです。ゲートボール、グランドゴルフはメジャーになっていますが、パークゴルフというのは、ゴルフ場に併設されている所もあります。専用のクラブ,ボール、ティーを使ってボールを打ち、カップインするまでの打数を競い合うスポーツです。クラブは木製のもので、プロゴルファーサルの道具に何となく似ています。私は、実家のご近所さんからパークゴルフに誘われていますが、普通のゴルフのほうにまだ未練があり、お断わりしています。

【第5位】プラモデル制作

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 少しマニアックですが、プラモデルはいつの時代も一定数のマニアがいて根強い人気があります。

 プラモデルの日本での市場規模は300億円とも言われています。魅力は何といっても完成した時の達成感です。そして奥は深くてリアルさをどこまでも追及できます。私はこれもユーチューバーから教えてもらいました。戦艦大和を作成しました。60㎝くらいの長さの物で、プラモデルそのものは3500円くらいで買えました。ただ、塗料や接着剤、工具はついていないため、別に買って総額で1万円くらいかかりました。

 まずは組み立てです。ユーチューバーによって手順が違うので、どのユーチューバーを信じるかが最初の作業です。あまり高度な技術を使うユーチューバーに合わせるのではなく、無難な方法を選びました。ユーチューブをコマ送りしながら作業を進めます。塗装は筆で絵具を塗るのとスプレーを使うことを組み合わせます。極めて細かい作業なので失敗の連続でしたが、何とか完成したときは感動しました。制作期間は3週間程度だったので、時間をもてあましている方にはお勧めです。

【第6位】ブログ

 ブログが趣味というシニアが増えているらしいです。

 自らが情報を発信して見てくれる人が増えてきたら嬉しくなります。毎日の訪問数を確認して楽しむこともできます。読者を意識する文書を書くことで、文書力や発想力がつきます。アクセスが増えれば広告を掲載して小遣いをゲットできるかもしれません。

 私はブログはやっていませんが、昨年生まれて初めてホームページを作成しました。自営業を始めるためです。ホームページビルダーサービスを使い、生成AIの質問に答えていけば、それなりのものが自動的にできて、それを補正して完成させていきます。ホームページのSEO対策もやりました。SEO(Search Engine Optimization)とは、見る方がグーグルなどでキーワード検索をした時に、検索上位に登場するように仕掛ける対応です。

 ホームページにブログやフェイスブックを入れることも簡単にできます。毎日のアクセス状況もすぐに分かり、日本だけでなくアメリカやロシアなどの方がアクセスしていることも確認できます。でも見る側、読む側に立って興味を持ってもらうことは難しいものです。

【第7位】 映画・コンサート

 旅行もそうですが、日常の世界から離れて非日常を味わうという趣味は刺激があって良いと思います。

 ほとんどの映画館ではシニア割がありますので活用したいです。私は今年になって、中島みゆきさんのコンサートを映画館で見ました。コンサート会場や大画面で見るとやはり趣が違います。

 

 最近はビデオオンデマンドというのがあり、月額千円以下で自宅で見放題ができるようなネットでのサブスクサービスもあります。ビデオオンデマンドでお勧めは、新作映画であればユーネクスト、海外ドラマであればフールー、話題のオリジナル作品であればネットフリックス、アニメであればディーエムエムティーヴィーなどです。

【第8位】 散歩

 朝の夜明け前後に散歩をしているシニアの方が多くいます。犬を連れて散歩している方も多いです。

 これは前に記述しました基礎代謝量とも関係しますが、サラリーマン時代は遠距離通勤だけでもかなりのエネルギーを消費していて、退職と同時にこの消費がなくなります。私は今朝、約一時間散歩をしてきましたが、その距離は4.5キロ、歩数は7,500歩、消費カロリーは265キロカロリーでした。265キロカロリーとは米のごはん一杯分なので大したことはありませんが、カロリーを消費していることは事実です。

 それよりも効果があるのは、家の中にずっといるよりも気持ちは良いものですし、健康寿命にもつながると思います。コストはかかりません。足腰を鍛えることは良いことですし、身体を動かすことによる有酸素運動は全身の血行を良くして、生活習慣病の予防に間違いなくつながります。

 くだらない計算ですが、1日5キロを365日歩けば1年間で1825キロとなり、鹿児島県を出発して北陸を経由して岩手県まで到達します。スマホの無料アプリの万歩計では、そのように過去に歩いた累計も見ることができます。私は年間で1200キロ程度です。

【第9位】 太極拳

 冒頭でご紹介したスーパー老人は、退職後に太極拳を始めたのにもかかわらず、師範免許まで取ったようです。マイナーなようですが、日本での太極拳愛好家は150万人以上いるようです。

 ジョギングや筋トレは苦手だ、段差でつまずきやすくなった、物忘れが多くなった、ストレスを感じているというような方には向いているかもしれません。その83才のスーパー老人は体幹がとても強いです。ゴルフをご一緒することがあるのですが、体幹が強いので18才年下の私よりもスイングがしっかりしています。なので太極拳をお勧めしている次第です。

 私の家の近くで行われているシニア太極拳コースは、1回2時間、月4回で月謝は税込で6000円です。

【第10位】 ボランティア

社会に貢献したいというシニアの方はボランティアも良いと思います。

 ご自身の関心のあること、やりたいことから無理をしない範囲で始めるのが良いと思います。阪神・淡路大震災では100万人以上のボランティアが駆け付けて「ボランティア元年」と呼ばれるようになりました。ボランティアと言えば福祉のイメージが強いのですが、環境、教育、国際、まちづくり、文化芸術と多様な分野に広がっています。

 具体的な活動例をご紹介します。①ゴミ拾いや清掃活動、②古着の回収や有効活用、③福祉施設での交流、④子供食堂、⑤地域のお祭りのスタッフ、⑥コミュニティカフェの運営、⑦海外ワークキャンプ、⑧外国籍の親を持つ子供への学習支援、⑨被災地でのがれきの撤去、⑩被災地への寄付の呼びかけ、⑪地域の伝統行事の手伝い、⑫スポーツ大会のスタッフ、などです。

 ボランティアの分類に入れて良いのかどうかわかりませんが、自治会役員、民生委員、寺の総代などをやっておられる方も多くいます。私の友人で音楽が趣味の方は、老人施設へ定期的に赴いて音楽を演奏しています。

 有償ボランティアというのもあります。多くの方との出会いが生まれます。住まいの周辺活動に参加したい方は市町村のボランティアセンタへ相談できます。

 分野を絞って活動したい方は専門サイトでお探しください。(activo、yahoo!ボランティアなど。)

【第11位】 油絵・水彩画・デッサン

 芸術系の趣味です。私はセンスがありませんが、私の先輩で油絵をずっとやっておられて、時々個展を開いておられます。その方は海外旅行も趣味のようで、海外の風景を油絵で描いておられます。

 市民講座では様々な芸術系の講座も行われています。テレビのプレバトでやっている色鉛筆、消しゴムはんこ、一筆書きども面白そうです。市民講座はたまに新聞の折り込みに入っていることもありますし、「〇〇市の市民講座」とネットで検索すればいろいろ出てきます。

【第12位】 写真

 気軽にできる趣味の一つで、シニアの趣味としては根強い人気です。

 一眼レフカメラで本格的に始める方が多いと思いますが、最近のスマホのカメラ機能はとても性能が向上しています。画素数も大きくなっていますし、手振れ補正機能なども充実してきましたので、とりあえずはスマホでも良いでしょう。

 一眼レフカメラの技術は奥が深く、例えば、近くのピントと遠くのピントを同じようにすることもできます。ノウハウの本もたくさん出版されていますが、使いながら自分でいろいろと試してみると良いです。

 ただし、何らかの目的や目標を持ったほうが良いと思います。写真を通してコミュニケーションを取ることを是非お勧めします。子供や孫とのやりとり、年賀状での紹介、サークルへの入会、コンテストへの出品などです。私は年賀状で「今年の写真」を紹介するようにしていますので、年末になって十分に写真が揃っていないときは焦ります。冬の朝起きて雪が降っていると、カメラをかついで電車とバスを乗り継いで北へ向かい、雪景色の撮影に行ったりしています。また、旅行に行った後は、撮った写真をアルバムにして同行者に渡します。目的もなく撮影するだけでは長続きがしないようです。

【第13位】 神社・仏閣めぐり

 興味のある方はあり、ない方はないという趣味です。

 日本には8万以上の神社と7万以上のお寺があると言われています。それぞれコンビニの店舗数(5万7000店舗)より多いです。神社は、神様の御魂を祀り祭祀を行うところで、お寺は仏像があって仏教の教えを説く僧侶の住むところです。歴史や文化を学びながら神社・仏閣めぐりをするとともに、「パワースポット」に行ったり、御朱印を集めて回る「御朱印女子」という言葉が流行っています。

 どこに行けば分からないという人は、まずは有名どころから回ってみましょう。京都などお寺が密集する場所や、一宮(いちのみや)と呼ばれるその地域で一番重要な神社に訪れるといいでしょう。一宮とは、12世紀頃、1つの国の中で神社に等級をつけて、最上級にあるものが一宮と称されました。例えば、私の実家の岡山県の美作の国では津山市にある中山神社が一宮で、大阪府の摂津の国なら住吉大社、三重県の伊勢の国なら椿大神社だったりします。

 お寺の仏像には如来、菩薩、明王、天部の4種類があり、仏像の知識を持てばその地域の歴史を考察するともできます。またお寺には庭園や建築物などの見学ポイントもあり、座禅や写経や精進料理という体験ができるところもあります。写経は自宅での趣味にされている方もいますし、自宅の檀那寺へ通って写経をしている方も私の親戚にいます。神社・仏閣めぐりのツアーもあります。私は週に2回程度は朝の散歩の途中に近くの神社に行って、2拝2拍手1拝を行っています。

【第14位】 ピアノ

 グランドピアノを趣味にする、というのは経験がなければ敷居が高いと思いますし、そもそも大きなグランドピアノなんて家に置けない、音が近所に迷惑、値段が高いという方が多いでしょう。私もそうです。

 でもグランドピアノではなくて、電子ピアノではどうでしょう? 狭いスペースでできて中古なら1万円程度で買うことができます。ピアノは脳トレに最適だそうです。右脳や左脳の運動神経を鍛えたり、落ち着いた穏やかな気持ちで生活ができるようになることがあります。手は第二の脳と言われ、手と脳は密接な関わりがあります。「30日でマスターするピアノ上達講座」といったものもあります。

【第15位】 料理づくり

 私の亡くなった父親は、71才で伴侶を亡くして一人暮らしとなりました。まったく料理などしたことのない父は遠くに住む私に対して「何とかなるので心配するな。」と言っていました。しかし、しばらくして私から「ちゃんと夕飯を食べている?」と尋ねたら、「大丈夫、毎晩すき焼きを食べている。」と言います。自分で作れる料理はすき焼きだけだったのです。私の妻が少しずつ料理を教えましたが、しばらくしてギブアップし、老人施設に入りました。私自身も妻が不在の時には、スーパーで総菜を買うだけです。

 私も含め、世の中のシニアの方には同じようなスキル保有者の方もいるかもしれません。男性がひとり暮しになったことも考えておかねばなりません。料理教室に通うのもありですが、ネットには「シニア1人暮らし、絶品レシピ集」といった記事がたくさんあります。いざという時のためにトレーニングをしておくのも良いと思います。

【第16位】 釣り

 海や川などの自然に触れながら釣りをして新鮮な魚を食べる、魅力のある趣味です。

 海沿いの釣りポイントの周辺では多くのシニアの方を見かけます。私もハマっていた時期があります。 私は川釣りの経験がないのですが、海釣りの場所は堤防釣り、磯釣り、船釣り、管理釣り場などあり、釣り方もサビキ釣り、投げ釣り、ウキ釣り、ジギングなど多彩です。

 初心者にお勧めなのは、堤防や釣り公園でのサビキ釣りです。足元に仕掛けを落とし、仕掛けのカゴに入ったオキアミが海の中でバラけることで魚が集まってきます。カゴの近くには餌に似た複数の針があり、その針を餌と勘違いした魚が食いつきます。その針にかかった魚が暴れることにより、近くの魚も他の針に食いついてくる、という仕組みです。ターゲトとしては、アジ、イワシ、サバなどの回遊魚です。

 

 釣りポイントの近くにある釣り具屋さんに立ち寄ると、狙える魚種や仕掛けの方法を教えてくれます。私は教えてもらったとおりにやってみたら、狙った魚のビックサイズをゲットできたことがあります。アジが大量に釣れたら、私は(妻が)アジの南蛮漬けにします。海釣ではカンパチやブリなどの大物の青物も釣ることもできます。

【第17位】 読書

 個々人によって読書量は違いますが、多くのシニアの方が読書を楽しんでいるようです。

 読書はボケ防止にもなりますし、コストがあまりかからないことが良いです。公立図書館に行けばタダで読めます。集中力や記憶力も高まります。家の近くの図書館に行けば、シニアの方々が真剣なまなざしをして読書にふけっています。

 ただし、私がつらいのは老眼で文字が見えづらくなったことです。家にあったハズキルーペを使ってみたら、クラクラとめまいがしそうになりました。そんなシニアにとって助かるのが電子書籍リーダーです。スマホやダブレットで電子書籍を読むこともできますが、電子書籍リーダーのほうが、目に優しい、読書に集中できる、風呂でも読書ができる、といったメリットがあるようです。

【第18位】 自分史の作成

自分史

 サラリーマンの方は現役時代にいろいろな経験をされてきたはずです。それを自分史としてまとめてみるのはいかがでしょうか?

 書き方にはいくつかの方法があります。生まれてから現在までの出来事を書く、時系列でエピソードを書く、当時考えていたことを書く、自分なりに頑張ったことを書く、自分を分析する、シニアとしての今後の目標を加える、などです。ネットには自分史のテンプレートもあります。私は60才を過ぎてコロナ禍になった時、外出が困難になったため、休日の時間を使って書きました。人に見せるつもりはなかったのですが、妻には見せたところ、結婚前の子供の頃のことやサラリーマン時代の会社でのことはあまり伝えていなかったので、妻は内容を見て少し驚いていました。

 

 印刷会社にネットで注文すれば50部・20,000円程度で製本もしてくれますが、私は手作業で製本しました。

 素人の私の手順は次のとおりです。①パソコンのワードで文書を入力する。その際、A4袋とじ式にフォーマットする、②プリンターに印刷する、③1枚ずつA4を半分に折って糊づけする、④背中を木工用ボンドで固める、⑤ボンドの上に厚紙を貼って綺麗にする、という方法にしました。製本コストは1,000円程度でした。自分自身を振り返ってみるのも良いと思います。ただ、出版して売れるかと言えば、難しいかもしれません。著名人の自分史、自叙伝というのは売れているようですが、普通のサラリーマンの書いた本に多くの方が興味を持ってくれるとは思いません。私が製本した本には、嫌だった上司の実名を書いているため、絶対に出版はできません。

 いくつかの趣味とその特徴を申し上げてきました。あとは、選んだ趣味をどこまで極めるかという問題です。

 前述のスーパー老人のように太極拳の師範を目指すのか、それとも健康維持や生きがいの一環としてやっていくのかということです。私の場合はいくつかの趣味にチャレンジしてきましたが、すべてが中途半端で、1つも極めていません。できれば1つくらいは極めたい、と願っています。

 三 家を守る

 家を守るということについて考えてみたいと思います。

 シニアになって家も持ち、子供たちも成長していく中で、自分の家は今後守っていってもらえるのだろうか、と悩む方も多いと思います。我々が子供のころ先代の方から教えられた価値観と現在のものとでは随分変わってきました。守るべきものと守らなくても良いものを選別していかねばなりません。また、それを子孫にも伝えたほうが良いと思います。

 少し前置きをしておきたいと思いますが、私自身は超ど田舎の育ちで古い慣例などを頭に塗り込まれておりまして、とてもコンサバティブというか保守的な思想を持っていることを自覚しておりますのでご容赦願います。

⑤ 家とは何か

 そもそも家とは何でしょうか?

 平安時代から「家督」という言葉が使われていたようです。当時の家督とは本家、分家の一族の長のことです。私の田舎では現在でも本家、分家という言葉が会話の中で良く出てきます。分家とは、長男以外の男性が嫁をもらって別の家で家庭を持つことです。ただ、長男が婿入りして二男が跡取りになるということはあります。私の実家は本家なのですが、今でもまわりからは「お前の家は本家なんだから。」などと普通に言われます。私の家の分家の叔父が亡くなった時に、本家の私が遺族親族を代表してあいさつをさせられたこともあります。

 明治時代から昭和時代においては家督相続がありました。それは家長が隠居や死亡した場合、長男がすべての財産と権利を相続するというものでした。二男や長女には相続を受ける権利はありませんでした。それが法律で定められていたわけです。昭和22年の民法の改正により家督相続制度は廃止されたのですが、今なおその考えは日本人の根底にあるようです。正確に言えば、仮に昭和22年より前から相続登記をしていなかった場合は、現在でもこの家督相続が適用されることはあるようです。

 都会で暮らす方にとっては別世界のような話かもしれませんが、「田舎の昭和の人たち」には今でも精神としてしっかり残っています。民法が改正されて70年以上が過ぎた今、法律家に言わせれば「何を言っているのか。」となるでしょうが、これは法律の問題ではなく文化の問題なのです。この文化のせいで法律上の問題も発生しているのも事実です。家を引き継いだ長男が財産のすべてを受け継いだために係争が起きたりしています。

 大事なことは、建物としての家を守る、墓や仏壇を守る、親戚付き合いや近所付き合いを守る、といったことをするのかしないのか、するのであればどのようにするのか、ということを明らかにして円滑に進めることだと思います。

 世帯主はそれを子孫にも伝える義務があると思っています。数10年後には子孫たちが、また同じ伝承をしていくことになり、新たな考えで伝承していくことになるかもしれませんが、今の世帯主として守って欲しいものと守らなくても良いものは区分けして、元気なうちに伝えたほうが良いと思います。

 私はその内容を紙に書いて家族に渡しています。そのタイトルは「東内家のマニュアル」としています。

⑥ 葬式とは何か、墓とは何か

 最近のテレビCMで多いのが家族葬のCMです。大人数でやらない葬式の需要が増えていることが良く分かります。昔と比べて変わったところと言えば、サラリーマンの家族が亡くなった時、会社内に訃報連絡が流れる習慣がありますが、最近の訃報連絡には必ず「香典や葬儀への参列は辞退させていただきます。」と記載されていることです。会社の皆さんまで面倒をかけないということです。

​ ただ、家族葬という概念はまだ十分定着していないようです。実の兄が亡くなった時、葬儀の後に兄の妻から「家族葬で済ませました。」と連絡を受けて、「先日も見舞いに行ったのに弟は家族ではないのか?」と憤慨したという記事を見ました。人によって家族の概念が違います。

 

 また昔では考えられない海洋散骨とか樹木葬ということも現れました。「海や山が好きだから」「死後は自然に還りたい」といった理由で散骨を望む人が増えているそうですが、核家族化や少子化が進む中で、残していく家族に墓の面倒までかけたくない、という気持ちもあるようです。ある保険会社の調査では、散骨を希望する人が4割以上という数値だったようです。それでも葬式は行います。

​ 墓じまいを考える人も多くなりました。墓じまいをするときは、ご遺骨をどのように供養するか考え、新しい納骨先を決めなければなりません。主な納骨先の選択肢には、一般墓、永代供養墓、納骨堂、樹木葬などがあります。

 遺骨をほかの場所に移すときは、改葬許可申請して改葬許可証を交付してもらいます。改葬許可証は、ご遺骨を取り出すために必要となる許可証です。改葬許可証の交付に必要な書類は、埋蔵証明書、受入証明書、改葬許可申請書の3点です。書類をそろえて市区町村に改葬許可申請をすると、改葬許可証が発行されます。中には、寺から離檀料を数百万円請求されてトラブルが発生したりしています。ということで、結構面倒ですしコストもかかります。

 

 人類の祖先とされるネアンデルタール人は、今から6万年前に故人に対して花を手向けていたそうです。このような弔いの心が人間なのかもしれません。

 

 もともと私の子供の頃は冠婚葬祭が質素でした。葬儀の時は十軒程度の隣近所のメンバーが葬儀の助け合いをして行っていました。「講組」というものです。葬具の手配や参加者のおもてなし、食事の準備などの葬儀のさまざまな面での助け合いがありました。私も山へ竹を切りに行って、葬儀で使う葬具を作っていました。火葬ではなく土葬だったので、皆で墓に遺体を運んで穴を掘って埋葬していました。日本中でそうやっていたようです。

 ところがセレモニーホールでの葬式が始まって贅沢になっていったのです。今では私の田舎でもセレモニーホールで行うのですが、ホールの中では隣近所の講組メンバーが前面に出て仕事をします。

 そうやって、時代が変わっていく中でも昔のやり方を踏襲していこうと田舎のシニアは頑張っています。私はそれを決して悪いことではないと思っています。日本の伝統はそのようにして受け継がれてきた面があるためです。日本各地で山の神や水の神を祀る風習がありますが、それは仏教が伝来する前からの神事であり、言い伝えで伝承されてきました。

 「正月、彼岸、お盆といった行事は古臭いから、もうやめてもいいのではないか」といった声はあまり聴いたことがありません。昔からの文化を言い伝えで伝えていくのも日本人の使命かなと考える古い人間の私です。

 

 少し話がそれますが、お盆というのはもともとは仏教行事ではないようです。仏教が伝来する前から日本の伝統行事としてあったようです。お盆には先祖が年に一度戻ってくるのでお迎えをしてお送りするというものですが、仏教の考え方は、人は生まれ変わる・輪廻を繰り返すということなので、祖先は遠くにはいないはずで、お盆の考え方と仏教の考え方は相反しています。仏教が伝来したのちにお盆の行事を仏教行事に取り入れたものだと民俗学者の方々は言っています。

 

 四 エンディング 

 シニアの方はエンディングのことを考えざるを得ません。

 自分が死んだらどうして欲しいか、その前に死ぬ時はどうして欲しいか、その前に自分が認知症になったらどうして欲しいか、相続はどうするか、などです。また、家のことの一切を仕切っている夫の場合は、残された奥様やお子様はどうすれば良いのか分からなくて困りはてます。そこで、元気なうちにエンディングの準備をされておいたほうが良いと思います。

⑦ エンディング整理

 まず、相続がもめないようにすることです。もめないためには遺言書を書くことがお勧めです。

 遺言書には、⑴公正証書遺言、⑵自筆証書遺言、⑶秘密証書遺言の3種類があります。秘密証書遺言は、内容を秘密にしたまま存在だけを認証してもらう遺言書で、実務的にはほとんど利用されていません。

 公正証書遺言とは公証人に作成してもらう遺言書のことです。それに対して自筆証書遺言とは、遺言者が自書して作成する遺言書です。公正証書遺言だともちろんコストは必要になります。財産の価格によって変動し、例えば記載された相続財産が2,000万円の預金のみであれば、4万円弱のコストが必要となります。

 最近マスコミで「紀州のドンファン」の相続に関する報道がありました。自らの財産の全てを遺族ではなくて地元の自治体に寄付するという遺言書でした。ドンファンは遺言書を自筆で書いておられたようですが、コピー用紙に赤ペンを使って走り書きで書かれていていたと報じられていました。それでも裁判所は筆跡を確認した上で有効と判断しました。

 ただし、自筆の場合は不備があれば無効となるため、注意が必要です。その注意点を紹介します。

 ⑴本人が自筆で書く、代筆やパソコン作成はダメ、⑵年月日を書く、⑶署名・捺印する、⑷あいまいな表現はしない、⑸財産目録だけはパソコンを使っても良いが、登記どおりに記載する、といったことです。例文は弁護士事務所のホームページなどで見ることができます。

 遺言執行者も記載したほうが良いと思います。相続人が多いと全員で遺言執行を協力して手続きをしなければならず大変なので、遺言執行者を定める訳です。

 それと自筆遺言書は見つけてもらえない危険があるため、ご家族に存在と保管場所を伝えておくことが必要です。

 また亡くなった時、発見者は勝手に遺言書を開封してはなりません。家庭裁判所の検認が必要になります。民法には「裁判所外で開封した者には5万円以下の過料」と書いてあります。でもうっかり開封されても過料が取られることはまずないと思いますし、遺言書が法的に無効となることはありません。

 一度書いた遺言書が、後になって状況が変わることがあります。法定相続人の変化などです。例えば相続をしようとしていた方が先に旅立った場合です。その対策として遺言書に予備的遺言(相続人Aが遺言者の死亡以前に死亡している場合は・・・・)という記載をしておけば良いのですが、私は面倒なので他の方法を取ります。ただし、私の方法(カキナオシ)は法的に自信がないため記述は控えます。

 私の場合は自筆証書遺言を書いていて、内容と保管場所は家族に伝えていますが、自信のない方は公正証書遺言をお勧めします。司法書士事務所などに依頼することもできます。司法書士事務所では、「初回相談無料」というサービスをやっていて、私は妻と一緒に無料相談に行って、遺言書の内容確認をしてもらったことがあります。そうやって、いざという時に妻が相談する先を作っているわけです。司法書士事務所の側もそれが目的なのでしょう。

 また話がずれますが、データの保存方法として一番長持ちするのはどういう方法か?ということについて、建築家の方と話をしたことがあります。 「電子データ」だと思いがちですが、そうではないようです。私はサラリーマン時代、ウィンドウズビスタのデータをウィンドウズ11に変換する必要があって苦労をしたことがあります。将来、マイクロソフトという会社がなくなれば使えなくなりますし、電子データは企画が変われば使い物にはなりません。昔使っていたフロッピーディスクやVHSは使えません。その建築家の方が言うには、「和紙に墨で書いた書類は1000年はもつ。」とのことでした。もし、永代にわたって子孫に言葉を残したい方は、和紙に墨で書くことをお勧めします。少し話がずれ過ぎましたが、遺言書はペン書きで良いです。

 

 遺言書は必ず誰もが書かないといない、ということではありません。トラブルなど考えられないという方は書かなくても良いと思います。

 

 エンディング整理とは、遺言書を書けば完了ということではないと思います。夫に先立たれた奥様はやることが多くて途方に暮れることになります。最近はセレモニーホールがサポートしてくれるサービスもあるようですが、基本的には奥様やお子様が手続きや手配をしなければなりません。

 

 項目別に確認していきましょう。まずは亡くなられてから葬儀までです。親戚、葬儀社、寺、会社関係者などへ電話連絡をする必要がありますが、連絡先は整理されていますか? 葬儀のやり方や場所は決めていますか? 墓はどうしますか? 寺へのお布施の額はいくらですか? 49日法要、初盆、1周忌などの法要はやりますか? 特に突然に亡くなられた場合、ご遺族は混乱してしまいます。

 

 次は手続きです。市役所への届けは何が必要ですか? 年金の手続きはどうしたら良いですか? 生命保険の手続きの連絡先はわかりますか? 銀行口座や金融資産の手続きはどうしたら良いですか? 公共料金などの引き落としはどうしますか? 車を処分するにはどこに連絡すれば良いですか? 相続の手続きは誰に相談すれば良いですか? これらの対策は多くの本が市販されているので解説は省略します。

 

 相続税のことも考えておかねばなりません。相続税がかかるのは原則として、正味の遺産総額が基礎控除額を上回るときです。基礎控除額は2025年時点で、「3000万円+(600万円×法廷相続人の数)」で計算します。法定相続人が配偶者と子2人だと4800万円となります。相続財産がそれ以下であれば課税されません。配偶者には相続税の軽減が認められていて、相続財産が1億6000万円以下、もしくは配偶者の法定相続分である遺産総額の2分の1までなら課税されません。ただしこれを適用してもらうには申告が必要です。一般的なサラリーマンの場合、1億6000万円を超えることはないと思います。

 相続税の計算においては、控除できる費用があります。通夜・葬式にかかる費用、お布施・戒名料、遺体の運搬、火葬費用などです。それに対して控除できない費用としては、香典返し費用、初七日・49日等の法事費用、墓碑の購入費用などです。また、死亡保険金(生命保険金)や、死亡退職金については、相続人1人当たり500万円まで相続税が非課税となります。

 

 贈与税のことも考えましょう。贈与税とは、無償で財産をもらった人に課せられる税金です。暦年課税というものがあり、これは1月~12月までの1年間に贈与された財産合計に贈与税がかかります。暦年課税には年110万円の基礎控除があるので、110万円までの贈与には贈与税はかかりません。ただ、2024年のルール変更で相続税の見直しもありました。これまでは亡くなる3年前までの生前贈与が相続税の加算対象だったのが、この期間が7年に延長されましたので注意が必要です。私はこの暦年課税は活用させてもらっています。毎年、妻に110万円以内の贈与をしています。配偶者の相続税の軽減とは別に、遺産総額を少なくすることは節税になります。銀行に手続きに行ったら「相続対策ですね。」と言われました。

 こういった事について、元気なうちにご家族と話をしておいた方が良いと思います。「そんな不謹慎な。」となるかもしれませんが、不謹慎ではないと思います。

 

 私はこういった項目について、メモを作って家族に渡しています。タイトルは「私が先に死んだときの手続き」です。自営業を始めたため、税務署の廃業手続きも書いていますし、葬式で妻が親族代表で挨拶をするときに話して欲しい内容も書いています。きわめて細かいことですが、死亡後の連絡先のうちで会社関係については、友人2人の名前と連絡先を書き、既に会社をリタイアしているので、葬儀終了後に連絡してもらうようにお願いしています。また私は、実家で葬儀を執り行って欲しいので、病院から実家までの遺体の移送方法も記載しています。遠距離の遺体の移送は、病院の提携の葬儀社ではなく、葬儀を行うセレモニーホールに頼まないと高額になります。葬儀をセレモニーホールに頼めばセット料金にしてくれます。墓については、私はちゃんと墓に葬って欲しいタイプなので、70才を過ぎたら夫婦の墓を自分で建立する予定です。

⑧ リビングウィル

 リビングウィルとは終末期医療について自分の意思を事前に文書で明確に示すことができる書類です。

 将来的に自分で意思表示ができなくなった場合に備えて、どのような医療処置やケアを希望するか、または拒否するかをあらかじめ伝える手段として活用されます。たとえば、延命治療を望むかどうかや、人工呼吸器の使用、心肺蘇生などについて明確な意思を示すことができます。

 リビングウィルは、自分の尊厳ある最期を迎えるために重要な役割を果たします。家族や医療従事者にとって、患者本人が望む医療を提供するための判断材料となり、混乱や不安を減らすことができます。

 

 厚生労働省の「終末期医療に関する意識調査検討会」のアンケートでは、リビングウィルの作成に賛成する人が7割に上るという結果が出ています。しかしながら、実際にリビングウィルを作成した人はわずか3%にとどまることがわかりました。賛成している人が多い一方で、行動に移す人が少ないという大きなギャップが存在しているのです。

 リビングウィルがない場合、家族が治療方法について判断を迫られ、感情的な葛藤を抱えることも少なくありません。また、家族間で意見が分かれることで、意思決定が難航する場合もあります。自分の意思を明に示しておくことで、こうした問題を避け、自分らしい最期を迎える準備ができるのです。

 

 終末期医療(ターミナルケア)に関する項目例をご紹介します。

 一 基本的な希望

  ① 痛みや苦痛

​​     できるだけ抑えて欲しい、必要なら鎮痛剤を使っても良い、自然のままで良い

  ② 終末期を迎える場所

​     病院、自宅、施設、病院に応じて​

  ③ その他の基本的な希望(自由記載)

 二 終末期になったときの希望

  ① 心臓マッサージなどの心肺蘇生

  ② 延命のための人口呼吸

  ③ 抗生物質の強力な使用

  ④ 胃ろうによる栄養補給

  ⑤ 鼻チューブによる栄養補給

  ⑥ 点滴による水分補給

  ⑦ その他の希望

 例えば、自分では「胃ろうによる栄養補給までして延命して欲しくはない。」と考えていても、ご家族が医師から「胃ろうで対応しないと延命ができません。」と言われたとき、「延命しなくて良いです。」とは言いにくいものです。手術前の本人に確認するのも気が引けます。一生怨まれるだろうとか、その判断が親戚中に伝わったら何と思われるだろうと考えてしまうのは当然だと思います。自らがリビングウィルを表明することが、その状況を助けることになります。

 五 サラリーマンが老後を活き活きのびのびと生きる

 「活き活きのびのび」としているかどうかを誰が評価するかは別として、自分でも他人からもそう評価されたいものです。

 もう一人のスーパー老人をご紹介します。83才の方で木彫りの彫刻活動をされている方です。今でも山などへ出向いて魅力ある木を探し、それを運んできて作品を作っておられます。出来上がった作品を展示しているドームもご自身で作っておられます。年齢を一切感じさせず、何よりも目が輝いておられます。会話でも後向きなことは話さず、前向きなことしか言われません。その方はサラリーマン出身ではなくて、学生時代からずっと芸術活動をされてきた方です。

 我々サラリーマン出身のシニアが、この方のように前向きで目を輝かせるにはどうしたら良いのか、私なりに考えてみました。サラリーマン時代の功績や努力に思い慕っていても、進化していくものではありません。残された数10年において、サラリーマン時代以上の功績や努力にチャレンジするような気持ちを持ち続けることだと思います。

 

⑨ 捨てる 

 

 私はサラリーマン時代は転勤族で、それに伴い家の引っ越しも10回以上しました。引っ越しをする時は不要な物を捨てることができます。ところが40代初めに最後の引っ越しをしてから20数年引っ越しをしていません。つまりその間、不要な物を捨てる機会がなかったため、家の中が不要な物で溢れかえることになったわけです。新しいものを買って古い物を捨てなければ物は増えます。サラリーマンを引退してやっと行動を起こしました。まず家の中に空きスペースを作り、そこに一つの部屋にあるものを全て運び込み、不要な物を捨てる作業です。

 そこで問題となるのが、不要な物の定義です。「まだ使えるもの」を必要な物に定義していると物は減りません。最近使っていない物は不要に定義していきます。20年前に海で投げ釣りをしていた頃に使っていた椅子は使いません。また投げ釣りを再開するかも? などと考えてはいけません。電話の置台も不要です。古い服も着ることはありません。使い古しのタオルも貯めれば良いものではありません。使っていない家具も邪魔です。使うことのない三面鏡を捨てようとしたら、妻が「嫁入り道具だ。」と言ったため、それは残しました。同じ機能の物をたくさん持つ必要はありません。例えば文具、計量カップ、ハサミは多くは必要としません。サラリーマン時代の名刺も全て処分しました。そうして在庫一掃をしました。

 

 でもまた増やす可能性があるため、毎年年末に床のワックスがけをすることにしました。ワックスをかけるためには、各部屋を今回のように空っぽにする必要があり、その機会を使って毎年断捨離することを定例化するようにしました。

 

 シニアになれば、食材以外はなるべく買わない方が良いと思います。1つ買えば3つ捨てることです。物に対する「物欲」から事に対する「事欲」に変えていかねばなりません。しかし、人間の物欲を自己制限するのはかなり困難を伴います。

 

 ミニマリストという必要最低限の物だけで生活する方がいるようですが、人間は仙人ではありません。そこで、いくつかの具体的な対策を検討します。

 

【対策1 買い物リストを作る】

 衝動買いを抑えて最小限に買い物にするため、必要な買い物リストを作ってそれ以外の買い物をしないようにする方法です。

 できればその際に捨てるものもリスト化できると良いです。必要と欲望を分けるようにしましょう。「本当にこれが必要なのか」と自分自身に問いかけるようにしましょう。

 

【対策2 ネットショップのアカウントを削除する】

 ネットショップは物欲を掻き立ててくれます。その道を遮断してしまえば、効果はあります。

 それは困るという場合は、ネットショップですぐに注文・決済するのではなく、とりあえず「欲しい物リスト」「カート」に入れておいて、しばらくの間寝かせるというのはどうでしょう。

 

【対策3 自分の服装を決める】

 シニアになって毎日のように、いつも新しいシャツや色んな柄の服を着ることは必要ないように思います。

 かえっていつも同じような控えめな色の服装をしておられるシニアのほうが、私は品があるジェントルマンのように見えます。「この人また同じ服を着ている」と怪訝な目で見るようなことはありますか? シニアともなれば自分の服装のスタイルを決めて、多くの種類を望まなくて良いではないでしょうか? 

 

【対策4 セールに手を出さない】

 ブラックフライデーなどと言って物欲提供者はセールを行います。お試し期間は千円ですというのもあります。

 一度サイトにアクセスしたばかりに追跡型広告も来ます。追跡型広告とは、ユーザの検索内容を把握して、その情報をもとに関連性の高い広告を表示する方法です。ネット保険会社で入院保険の試算をしたことを前述しましたが、その後、ネット保険会社から度々メールが届くようになりました。こういったセールや広告を断ち切ることも解決となるかもしれません。

 ただし、セール品の中には本当の掘り出し物もあるので、全否定するわけではありません。

 

【対策5 整理整頓する】

 家の中を常に整理整頓しておけば、余計な物を置きたくない、という気持ちになります。スペースが空けば何かを置きたい、という発想は捨てたほうが良いです。

 整理整頓は心を豊かにしてくれます。人間は欲望の生き物という認識を持ちながら、物欲を抑制する仕掛けを作っていきたいものです。

 

⑩ 工夫をしながら拾う

 

 最後になりますが、先ほどの「捨てる」と反対の「工夫をしながら拾う」ということについて考えていきます。

 これまで述べてきましたように、まずは老後の不安を取り除いてスッキリすることが肝心です。経済的な不安、生きがい的な不安、エンディングの不安などを取り除きましょう。問題の先送りは良くないと思います。その上で、新たなチャレンジ目標を拾い、これまで以上の幸福を拾っていかねばなりません。チャレンジ目標を拾うためには、情報を集めた上で思い切ってチャレンジをするしかありません。

 

 私は65才から自営業を始めましたが、初期投資は数万円程度です。まだ売上げは大したことはありませんが、営業コストは「墨汁代」くらいなので大きな赤字になることはありません。シニアの方が大きな投資をして仕事を始めることはあまりお勧めできません。失敗した時のリスクが大き過ぎます。

 〇〇便といった運送業の仕事で、請負方式で対応する仕事があります。「軽車両は自分で調達してください。」という形態の仕事です。そのためには200万円程度の車や無線を準備するための初期投資が必要になります。以前、運送会社に仕事をお願いした時、若い方に「投資は回収しましたか?」と尋ねたら、「まだでーす。」と言っていました。若い方であればまだしも、シニアにとって200万円の投資を回収するのはなかなか大変なことで、途中で投げ出したら投資が無駄になってしまいます。200万円で調達したものは200万円で売却することはできません。

 

 関西のサラリーマンの方で「退職後はタコ焼き屋かお好み焼き屋を始めたい。」と言う方が結構います。実際私の友人がそれをやっていますが、その方は親戚の店を継いでいるため、店とノウハウを引き継いでのことです。私は学生時代にお好み焼き屋でアルバイトをしていたことがありますが、サラリーマンとして事務職や技術職をずっとやっていた方が、ゼロからタコ焼き屋やお好み焼き屋を始めて成功するのはなかなか難しいと思います。 

 初期投資には十分に気をつけてください。

 

 同居家族がおられる方は、是非ご家族を大切にしてください。

 私の先輩に「退職後はどういう生活をしていますか?」と聞いたら、「だいたい家の中にいて、妻に毎日3度の食事を用意してもらっている。」と言われていました。奥様との夫婦関係にもよると思いますが、世の中では定年離婚も多いようです。定年が離婚のタイミングになりやすい第1の理由は、夫婦が一日中顔を合わさねばならないことです。第2の理由は、退職金を含めた財産分与が最大に期待できるからです。

 

 夕食を作っていて、夫から「晩御飯はまだか?」と声をかけられた妻が、それまでの溜まりつもった怒りが爆発し、包丁で夫の腹部を刺して殺害した、という事件が昨年ありました。気をつけましょう。

 

 それもあり、趣味については、必ずしも夫婦で一緒に取り組まなければならない訳ではありません。

 無理強いされた趣味には力が入りません。朝の散歩でも、女性同士で歩く姿と男性一人で歩くという姿が多いです。男性同士というのはあまり見たことがありません。それに対して、スポーツセンタの筋トレコーナーでは男性同士を良く見かけます。シニアになってからは筋肉をつけたい、という願望は男性に多いということだと思います。

 

 私の偏見かもしれませんが、男性と女性は感性が違うと思っています。少し違う話ですが、私は腰痛もちで、年に1回程度、整体に行きます。視力がまったくない全盲の方に施してもらう間に、私は失言をしてしまったことがあります。「春になって花が綺麗に咲いていますよ。」と声をかけてしまったのです。その方はそれには反応せず、しばらくして「小鳥のさえずりも聞こえるでしょう。」と返してこられました。失言を反省するとともに、聴力もある私は小鳥のさえずりに関心を持っていないことについても気づきました。もっと感性を研ぎ澄ましていかねばなりません。

 

 感性が違えば、モノやコトへの興味や関心も違ってきます。大事なことは、お互いを尊重し合うことだと思います。

 リタイア後の新たな良い夫婦関係も拾っていきましょう。「工夫をしながら」いくつかの楽しみを持つことは大事だと思います。

 先ほど紹介した彫刻家の方は、彫刻活動そのものがとても楽しそうでした。でも制作した木彫りの作品は、有名な彫刻家の方であっても、それほど多く売れるものではありません。収入はどうするかと言えば、彫刻教室をして収入を得るわけです。そうやって工夫をしながら楽しい彫刻に没頭しておられます。

 楽しみを味わうためには工夫が必要です。

 

 シニアの方の中には人の話は聞かず、自分のことばかり話す方もいます。こちらが話そうとしても聞こうとしてくれません。これでは良好なコミュニケーションとは言えません。シニアになれば良好なコミュニケーションをとることは重要なことです。積極的傾聴(アクティブリスニング)という言葉がありますが、この工夫も必要だと思います。スーパー老人たちはこれが得意なようです。先日、83才の太極拳のスーパー老人とお酒を飲む機会がありましたが、私の話を良く聞いていただきました。93才でトラクターを運転するスーパー老人も私の話を聞いてくれます。

 

 私はホストクラブという所には行ったことはありませんが、ホストクラブの売れっ子ホストというのは、女性客に対してあまり話しかけることはしないそうです。とにかく女性客の話を聞くことに集中するのです。女性客は、話を聞いてくれるホストには徐々に憧れを感じてくるようになります。だから売れっ子になれるわけです。ペラペラと喋り続けるホストは売れっ子にはなれないようです。

 家族の間でも友人との間でも、自分が売れっ子ホストになれるような工夫をすれば、他人から見て憧れの存在になれるかもしれません。積極的傾聴(アクティブリスニング)という工夫が多くの幸せを拾うことにつながるように思います。

 高齢化社会が進んでいく中で、サラリーマンが老後を活き活きのびのびと生きることができる世の中になっていけば良いと願っています。お互いに頑張りましょう!

 

終わり

 

令和7年8月4日 賞状とうない堂 東内 文雄

 

作者プロフィール:昭和34年生まれで、普通のサラリーマン出身の高齢者

参考文献:インターネット情報

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